奥大和ライフジャーナルOkuyamato Life Journal

御杖村 2024.1.10 / コラム

ある日「マコモ難民」になった主婦が、御杖村で「まこもファーム」を始めてしまうことになったあれこれ。 

文=岡田江美(まこもファーム) 

私が御杖村にある「道の駅 伊勢本海道 御杖」でマコモダケを見つけたのは、8年ぐらい前だったでしょうか。 

なんだかよくわからないまま、面白い野菜やなと思って買って帰ったものの、下処理でどこまでむいたらいいのかわからず困っていたところ、たまたま実家の母からの電話がありました。 

「こういう経緯で、こんな野菜が今まさに手元にあるのだけど…」と話すと、奇遇にもそれは母が大好きな野菜だと判明したのです。 

今でこそ少しずつ産直等で見かけるようになってきましたが、その頃は今よりもっともっとレアな野菜。中華街などで運が良ければ見かけるぐらいで、手に入れるのが困難なものでした。それを私が今まさに手にしているということで、母が電話越しに大興奮していたのを今でも覚えています。 

母方の祖父が御杖村の出身。祖父は私が物心ついた頃には他界していましたが、大阪市内でも中心部に近い「都会」で生まれ育った私にとって、御杖村は毎年夏休みに遊びに行く、まさに夢の国でありテーマパークでした。 

川に行って石をめくればエサになる虫がいて釣りを楽しめる。遊具のある公園はなくてもそこら中に虫がいて虫捕りができ、畔や山の中を走り回って遊べる。夜になるとプラネタリウムよりたくさんの星が空を埋め尽くしました。 

今でこそ道路が整備されトンネルができ、とても気軽にたどり着くことができる御杖村ですが、私が子どものころは狭いS字カーブの峠道が続き、車酔いせずに到着できたらラッキーという秘境でした。夏休み明けはいつも友達に「どんなに田舎オブ田舎なのか自慢」な思い出話をしていたものです。 

御杖村で手に入れたマコモダケは、控えめに言って最高においしく、それ以来、秋になるとマコモダケを探し回って手に入れ食べるというのが恒例となったのですが、コロナ禍になると同時に今まで手に入れることができていた自宅近辺のお店で全く見かけなくなり、「これは大変なことだ!」と思った私はマコモダケを自宅で育てられないかを調べ始めました。ちなみにマコモダケはイネ科で稲のようにバケツ栽培が可能です。 

近隣で検索をかけると、いつも御杖の道の駅にマコモダケを出している御杖村のお隣・三重県美杉町の「八十六石まこもの集い(代表・横川さん)」がヒット。道の駅でマコモダケが売り切れの時は直売所にお邪魔したり、電話で注文して送ってもらったりしていたので「苗を分けて欲しい」と伝えるために訪問したのでした。 

こちらが横川さん

ちなみに私は野菜の栽培などしたことがなく、手軽といわれる観葉植物やサボテンまでも枯らすような人物なのですが、マコモダケは基本的には水をたっぷりあげること、たまに肥料をあげることくらいで栽培できそうだったので、チャレンジすることを決意。 

遠隔で横川さんに色々とご指導いただきながら、その年はバケツ育ちの細身のマコモダケがいくつか収穫できました。 

収穫した写真を横川さんに送ると、そのミニサイズぶりを見て「田んぼに収穫体験に来なさい」と言ってくださり、今後の勉強も兼ねて家族で御杖の田んぼに行くことにしました。 

水を張った田んぼに入るのは初めてで、一歩進むのも一苦労でしたが、採り頃の立派なマコモダケを見つけた瞬間というのは宝物を探し当てたかのような感覚で面白く、収穫作業はまだ難しい子どもたちも、切り揃えて袋詰めをするところを体験させてもらうと、「これは楽しいぞ!」ということになり、それから予定のない週末ごとに家族で押しかけては勝手に手伝うということをして、シーズンの終わりを迎えました。 

一回(田んぼで)作ってみるか ?

ある日、横川さんからまさかの声をかけてもらい、「そんなんできるんかいな」と思いつつ、マコモダケを作ったら喜んでくれる人の顔が何人も浮かんだこと(自分もマコモ難民になることがない)、「一緒にやるから大丈夫」と言ってくださったこと、やりもしないで断るのはもったいないという思いから決断。 客という立場から一転、通いのマコモダケ生産者となったのでした。 

「まこもファーム」は専業農家ではありません。中の人は御杖村の人でもありません。大好きなマコモダケを大好きな御杖村で、マコモダケが好きな人たちに喜んでもらうために誕生しました。 

自分が「マコモ難民になってしまった!」と思ったように、他にもそういう人がいるはずだし、自分がそうだったようにマコモダケのおいしさを知って大好きになってくれる人がいるはず。 

片道1時間半の通い道。春夏は山の季節の移り変わりを感じながら、週末のみの作業をしています。秋、マコモダケの旬の時期の1カ月は新鮮色白なマコモダケを送り出せるよう収穫と荷造りに専念する生活を送り、極寒の冬は御杖村での作業はお休みです! 

ガッツリ過ぎない、こんな御杖村との関わり方がいかにも自分らしいと思えたところで、これからも「好き」がつなぐご縁を大切にしていきたいと思います。読んでいただいて、ありがとうございました。 

Writer|執筆者

岡田 江美Okada Emi

大阪生まれ、大和郡山市在住。3児の母。マコモダケをこよなく愛し、祖父の故郷である御杖村でマコモダケを栽培する「まこもファーム」を始める。御杖村の美しく豊かな自然が大好き。

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