ともだちひゃくにんできるかな? 曽爾村のTOPOSで開かれる「DA CAMP」のぐるり。
写真=DA CAMP制作委員会 文=安川将之(Yanagimoto STAND)
いちねんせいになったら いちねんせいになったら
ともだちひゃくにんできるかな
ひゃくにんでたべたいな ふじさんのうえでおにぎりを
ぱっくんぱっくんぱっくんと…
今の子どもたちもこの歌を歌っているのでしょうか?
「友達100人できたなら、自分も含めたら101人になるんちゃいますか?」というツッコミはちょっと置いといて、私が最近体験した友達約100人と過ごした楽しい時間のお話をしたいと思います。
ポットラックイベント「DA CAMP」
5年前から「DA CAMP」というキャンプイベントを主催している。会場は曽爾村にある1日1組限定のプライベートキャンプ場「TOPOS」だ。
もともとは僕の超プライベートな「焚き火を囲む会」がルーツになっていて、その性質上「DA CAMP」も、うっすら招待制のイベントとして2018年から毎年開催している。
2回目以降はポットラック(持ち寄り)キャンプ形式にしていて、食べ物・飲み物はもちろん、遊びや楽しい時間を会場にいる皆でシェアして過ごす。
おいしい料理とお酒、焚き火、ドラム缶風呂、ピザ窯、テントサウナ、ダッヂオーブン、薪割り、バーテンダー、楽器演奏、すべらない話などなど、参加者はバラエティに富んだ持ち寄りをしてくれる。食用ザリガニ釣りやスケートボード用のランページ、インターネットラジオの収録なんてのもあった。
曽爾村在住トマト農家の中野君が主催している「曽爾シネマ」も持ち寄り企画のひとつ。これまで『ブルース・ブラザーズ』など3タイトルを野外上映してくれている。
創意工夫をこらした「誰かを楽しませたい」という思いが会場全域にあふれ、笑顔がつながっていく。自分ではない誰かを、楽しませたり喜ばせたりするのがいかに嬉しいことか、体験してもらいたいと思っている。
妄想広がるTOPOSという場
最高のロケーションを有するTOPOSという場所との出会いも大きかった。
初めて「DA CAMP」を開催したのは、TOPOSがオープンしてまだ半年かそこらのこと。その年の春ごろ、「曽爾に新しいキャンプ場ができますよ!」とある筋からタレコミがあり、即ロケハン(アポ無し)。教えてもらった場所に行ってみると、とんでもなく素敵な空間がありました。
僕は憑りつかれたように場内を歩いて見て回り、「ここにテントサイト」「ここで焚き火」「ここにドラム缶風呂」「ここでBBQ」といった感じで、妄想をパンパンに膨らませながら「よし!ここでキャンプイベントをしよう!」と決断。
アウトドアが好きな男の子なら「キャンプ場オーナー」という肩書きに一度や二度憧れるときがあるんです。少なくとも僕にはありました。そのとき思い描いていたキャンプ場は、確かにTOPOSのような場所でした。
ほどなくして、そんな男の夢を叶えたTOPOSオーナーの伊野君にも出会えた。感じのいい素敵な方でよかった。そんな場所でキャンプイベントができるって最高じゃないですか?
実現した100人キャンプの風景
そして、2022年の10月15日と16日、これでもかという晴天のもとで「DA CAMP5」を無事開催することができた。
もう5回目…否、まだ5回目。
すでにリピートして参加してくれている人も多くいて、会場内での挨拶も「ただいま~」「おかえり~」「ひさしぶり~」なんて具合。他府県からも多数参加いただいた。中には東京から参加のツワモノもいる。
今回は「曽爾シネマ」の映画上映会を一度お休みして、「特別興行ダキャンプ寄席」と銘打って落語家の笑福亭笑利(しょうり)さんにお越しいただき、落語を披露いただいた。落語を生で見たことがある人もない人も、大人も子どももみんな大いに笑った。
「ダンシング・ピンポン」のトーナメントも盛り上がった。参加者はなんと37人にのぼり、経験者でも初心者でも、大人でも子どもでも、音楽に合わせてノリノリでピンポン。ラケットだけでなくフライパン、薪、今話題の棍棒を使う参加者もいた。
あとは「ダ・ライブ」と題して楽器を演奏できる人もできない人もステージに上がって、みんなでシンガロング。バンドマスターのケンちゃんは現役のバンドマン。いつもみんなを巻き込んで楽しませてくれる。
「料利長 (DA CAMPネーム)」も、例年同様に深夜まで天ぷらを揚げ続け、早朝から朝ご飯を用意して撤収時には燃え尽きていた。おなじみの光景である。
とりわけ目立ったこれら以外にも、参加者それぞれが持ち寄ってくれたいろいろな形の愛がシェアされて、また来年へと循環する。見ず知らずの人同士が、この場を通じてどんどんつながっていく。
今回受付に用意した100名分の名簿は埋まってしまい、欄外に名前を書いてくれた人も数名いた。「DA CAMP」を始めた時から「100人でキャンプしたい!」という思いがあったので、今回は今までの成果みたいなものも感じることができた。
カーモン・ベイベー・ソニムラ
そもそも僕が曽爾村に足を運ぶことになったきっかけは、僕が営んでいた服屋の常連だったチュウ(林宙志)君が曽爾村の地域おこし協力隊に入隊し、移住したところから始まる。
2016年の春、チュウ君は曽爾村に移住し、その夏に僕は服屋を辞めて奈良市富雄から天理市柳本に拠点を移すことになった。
そして冬季休業目前の屏風岩にほど近い貸別荘をチュウ君に手配してもらって、「AROUND 83 スーパー曽爾ックジェットボンファイヤー☆」というどこに出しても恥ずかしいネーミングの焚き火イベントを開催したのだった。
そこには、 トマト農家の中野君の姿もあったので、今思えば「DA CAMP」のタネはその時に曽爾村に植えていたのだろう。
「DA CAMP」を通して、多くの曽爾村の人たちともつながることができた。
ふらっと遊びに行っても誰かしらに会える。ススキでお馴染みの曽爾高原をはじめ風光明媚な観光名所を目的にしても魅力充分の曽爾村だけど、僕にとっては多くの楽しい仲間がいる曽爾村をもっとたくさんの人に紹介したい。
こんなご機嫌に過ごせる場所や心地よい人間関係があれば、他に何もいらないんじゃないか…とすら思わせてくれる。
先日、ぼくが経営するお店「Yanagimoto STAND」チームとTOPOSのクルーが一堂に会し、TOPOSの未開拓エリアの整地に向けた作業を行った。
実際にその場所がテントサイトとして利用できるのはまだ先の話だけど、「DA CAMP6」開催のあかつきには、TOPOS内最大級のテントシティが出現することだろう。
Writer|執筆者
1975年、大阪生まれ。20年間アウトドア業界で揉まれた後、2017年に集会所「Yanagimoto STAND」をオープン。曽爾村のキャンプ場「TOPOS」で開催される「DACAMP」も主宰している。