奥大和ライフジャーナルOkuyamato Life Journal

下北山村 2018.1.31 / コラム

「夫ターン」でやってきた、奈良で最も海に近い村・下北山村で実感する、心に彩りのある日々。

イラスト・文=上村恭子ココトソコノ制作室

「奥大和」と聞いて、皆さんはどのような風景を思い浮かべますか? 山間の奥深い木々に囲まれた景色、今の季節なら雪深い真っ白な風景を思い浮かべる人もいるかもしれませんね。

私の住む下北山村は奈良県の一番端っこの南東に位置していて、奥大和と言われるエリアの中でも一番奥…となるのでしょうが、低めの山々に囲まれ、雪も少ない比較的暖かな村なのです。

そして海のない奈良県の中でも一番海に近い、というアピールポイントもあります。

村内には海釣りも含めた釣りが趣味の人も多く、またここでの生活の日常の買い物は海側の熊野や尾鷲に出る方が早い、というのもあり、奈良北部より新鮮な海の幸にあやかる機会が多いんですよ。

そのように、食べ物としての海の幸はもちろん、生活圏に海がある日々というのも、また心に彩りを与えてくれるのだなぁ、と実感する毎日であります。

山と海とのどかな風景と共に日常を過ごしつつ、たまに訪れる都会の賑やかさを特別な非日常として感じるくらいがちょうどいい。そう感じる、私のような方もおられるのではないでしょうか。

そんな下北山村へ私が越してきた理由は、夫が家業を手伝うため、それについてきたといういわゆる「夫ターン」でした。

みなさんも今まで生きてきた中で「住むところを選ぶ」分岐点がいくつかあったと思います。それは進学だったり就職だったり、結婚だったり。あまり引越しをしたことがない人も「今のままここで暮らす」という選択の結果なのでしょう。

私は「夫についていく」ことを選び、下北山村に越してきました。

村の先輩の中でも、村外から嫁いできて村内で暮らし、旦那さんが亡くなられてもそのまま村で生きていくことを選んでいる方がたくさんおられます。「ここ(下北山村)で最後まで居りたいわ」と言う彼女たちの言葉に、私もいつかそう思うほどになれるのだろうかと、越したばかりの頃は思ったものでした。

現に、奈良市から下北山村という、奈良県の端から端への引越しに関しては、仕事のこと。人づきあいなど、周りが色々と心配してくれたものでした。

もともと私はデザインやイラストの仕事を、主に在宅でしていました。それだけなら在宅でできるといえども、受注体制などには不安が残りますよね。

でも私はそれを一人でしているわけではありません。ちょうど引っ越す直前あたり、奈良市内で「フルコト」という雑貨店を一緒に営む5人の仲間と、編集企画を主な業務とする「ココトソコノ制作室」と言う合同会社を法人化していたのです。

このやり方によって受注や営業、打ち合わせなどは奈良県北部の仲間にお願いして、私は静かな村で作業に集中する。そのようにしてうまく回すことができているのではないかと感じています。

そういえばこの「フルコト」の仲間は、下北山村に引っ越すと伝えた時も「いいね。面白いことができそうだね。」という風に言ってくれ、背中を押してくれました。それもそのはず。仲間には東京から月一ペースで洞川に通う者もいたし、また、吉野に仕事で行き来している者もいるしで、南部の魅力を知り尽くしている人ばかりだからです。

そんな仲間と共に、下北山村に来ても変わらず、「今自分の住んでいるところはいいところだよ」と自分なりの方法で言い続けていると、下北山村の中でもイラストの仕事や、デザインの仕事をお願いされるようになったりするわけで…

村の中で仕事を請け出すと、自然と人とのつながりもできてくるのが嬉しいところ。

ところで、主にイラストの仕事やデザインが必要とされる時というのは、告知やロゴ、現存の何かのデザインを一新したりと、新しいことが始まる時が多いんですが、ちょうど今、そんな感じで下北山村は色々と新しい風を入れていこうとしている時でもあるのです。

その話はまた次回。

Writer|執筆者

上村 恭子Uemura Yasuko

イラストレーター。奈良市内の雑貨店「フルコト」のメンバーと、奈良の魅力や歴史を広く伝えたいという想いを込めて「企画編集会社ココトソコノ制作室」を設立。平成28年に下北山村に拠点を移す。

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