五歳の娘と一緒に歩いていて、道端に見つけた小さなガラス瓶のカケラ。
エメラルドグリーンとブルーの間の色。
その綺麗なガラスのカケラを見て、娘は
「川のお水がなんでここにあるんかな、と思った」
とクスクス笑う。
その言葉を聞いて
『この村で育ちつつあるこの子にとって、川の水の色というのはこんなに綺麗な色なのが当たり前なんやなぁ…』と、
少し驚いたのと、羨ましいのと。
下北山村に限らず、奈良南部はどこも川の水の美しい所で、
それがそこで生まれ育った人達の大切な想い出の景色だったりもします。
田舎といえば空気が美味しい、そして水が綺麗。
というオーソドックスなイメージではありますがそれはそのまま健在です。
夏になれば川遊びで盛り上がる子供達や若い人達。
やんちゃそうな若い子達が川辺で遊びながら「お前の田舎最高やなぁ!」と、
おそらくそこで生まれ育ったのであろう友人に声をかけてる場面も見たことがあります。
そうやって、自分が生まれ育った場所に友人や大切な人を案内した時に、
まず、水の綺麗さに驚かれるというのは「奈良南部あるある」の一つだと思います。
そうして少しずつ、水の美しさというものに誇りを抱いて行くのかもしれませんね。
ここ下北山村の中でも特別水の色が美しいといわれる場所はいくつかあるのですが、
その中でも有名なのはやはり『前鬼川』でしょうか。
役小角(えんのおづぬ)の弟子前鬼(ぜんき)と後鬼(ごき)の、
前鬼の名を冠した前鬼川。
秘密の場所のようなその佇まいのせいもあって、
その色を目にした時はそれはそれは感動します。
誰が呼び始めたか、その川の色の名を『前鬼ブルー』と呼ぶのだとか。
そんな感じで思い出の色に名前がついている、というのは
とても良いなぁ、と私は密かに思っていて
生まれ育った、また、移り住んだ
大切な場所の景色にある美しい水の色
少しだけ誇りを持って思い浮かべる水の色
それは水の綺麗な場所で過ごした事のある人ならだれにでもある大切な風景なのだけれど
『前鬼ブルー』と一言言えば、
共通の思い出がある人にはそれが鍵になって、
下北山村のあの川の色と、景色と空気とを思い出す事が出来ると思うから。
そんな「前鬼ブルー」という言葉にすごく惚れ込んでしまって
何か、この色と名前でできないかと考えた時に、
村で生まれ育った人と、この村に訪れて村のことを大切に思ってくれた人
何人かに、「前鬼ブルー」と言えばどんな色か、というのを色見本を見てもらいつつ
訪ねたことがありました。
帰って来た答えはまさに十人十色でした。
水色、空色、天色、浅葱に孔雀青…
そしてそれがどの色も確かに「前鬼ブルー」なわけで。
「十人十色の前鬼ブルー…」なんてコピーが思い浮かんだり。
そんな水とともにある下北山村。
夏には川遊び、秋には紅葉とのコントラストで目を楽しませ
寒さ厳しい冬には川面が凍る。
そして春からだんだんと釣り人で賑やかになります。
そういえば3/1といえば下北山村ではあまご釣りの解禁日でもありますね。
下北山村の釣り好きはいつもこの日をそわそわ心待ちにしていて、
透き通る川を覗き込んでは魚を見つけ、「おお、いるいる」と嬉しそうに呟きます。
まだ肌寒いながらも、春はちゃんと来ているのだなぁと思わせる
美しい川とともにある風物詩の一つです。
さてここから少しお知らせ
そんな美味しいアマゴや、春まなを味わえるメニューの提供や
前鬼ブルーの名を付けた新商品や、
このローカルライフジャーナルの下北山村の記事でも登場した
本田さんの素敵な木のお皿の販売などなど
下北山村を奈良市内で楽しめるイベントを開催します。
【きっと来たくなる きなりの郷 下北山村】
下北春まなが採れたての美味しい季節に、
下北春まなのめはり寿司や茶粥をはじめとした限定ランチの提供と
ワークショップ(※満席のため受付終了)を
奈良市の『ことのまあかり』にて下北山村役場の全面協力で開催!
〈詳しくはコチラ〉
http://www.vill.shimokitayama.nara.jp/event/2018-02-09-13-41.html
この村にやって来て二年足らずの一人の突然の申し出に
全面協力で村役場さんが乗っかってくれるこのフットワークの軽さ、
すごいと思いませんか…
これも前回の記事で少し触れた「新しい風」
今回は娘の川の水のカケラ話から、つい水の美しさをお伝えしたくなり
予定を変更いたしましたが次回の記事では
このイベントのレポートも含めて紹介したいと思います。
Writer|執筆者
イラストレーター。奈良市内の雑貨店「フルコト」のメンバーと、奈良の魅力や歴史を広く伝えたいという想いを込めて「企画編集会社ココトソコノ制作室」を設立。平成28年に下北山村に拠点を移す。