奥大和ライフジャーナルOkuyamato Life Journal

山添村 2024.3.8 / コラム

どこにいても「私」はアップデートできる。「交流施設soyel」と「ヤマラボ」を通じて得た学びについて。

写真・文=井久保詩子(KOEYA / Sun-ten)

山添村民になって、丸9年が経とうとしています。

ちょうど2年ほど前にも書かせていただきましたが(前回の記事はこちら)、私はこの村が好きで、肌に合っていて、だからこそ自分もここで何かしらのお役に立ちたい、「持ちつ持たれつ」の「モチツ」を増やしたい、という思いをもって、なんやかんやと地域のいろいろに首を突っ込んできました。

最近は、「井久保さんは、山添村の有名人やからね」と言っていただくことも珍しくなくなって、気がつけば、村での行事に顔を出しても、知り合いが一人もいないということはほとんどなくなりました(小さいコミュニティならではのことではありますが)。

仕事を辞めて、滋賀県のそこそこ便利な町から山添村に来て、子どもを2人産んで、社会とのつながりに焦がれるなかで地域おこしを学び始めたわけですが、学ぶなかで、「仕事とは、他者の困りごとを解決することである」といろんな本で目にしました。

そう考えると、「仕事」はどこにでもあります。特に「会社」という単位でなく、「地域」という単位で活動をしていると、本当に「仕事」はなくなることがないなと感じています。従来のことを続けるにも、新しいことを始めるにも、誰の手も借りずにできる人などいなくて、金銭のやりとりがあろうがなかろうが、それこそ「持ちつ持たれつ」という価値の交換をもって、誰もが誰かの「仕事」のおかげで生きているんだ、と実感するこの頃です。

グループSun-tenと交流施設Soyelのスタート

2022年度には、県が主催する「奥大和コミュニティマネージャー育成プログラム」に参加させていただき、他地域のプレーヤーの皆さんと共に、いろんなことを考えました。地域内や地域間の交流を担う具体的な企画についての学びの場だと思って参加したのですが、実際に学びが多かったのは、自分の内面との深い対話を含む、チームビルディングについてのことでした。

このプログラムでの学びが、その後の私と仲間たちに起こった出来事に向き合うにあたり、大きな支えになったのは間違いありません。

2023年4月、山添村の新しい交流と観光の拠点として、既存の建物をリニューアルした「交流施設Soyel(ソエル)」がオープンし、2021年から改装プロジェクトに携わってきた私を含む村の母親のグループ「Sun-ten(サンテン)」が、指定管理者として施設の運営を担わせていただくことになりました。

既存の施設をリニューアルした「交流施設Soyel」。外観の形はもとのままですが、星の美しい村を意識した深い青に塗り替えてもらいました。

会議室だった場所はキッズコーナーのあるコミュニティスペースに。授乳室やサロンルームもあります。

地域のことに関わり始め、フリーペーパーの発行、お土産物開発、観光協会など、いろんなことに首を突っ込んできた私ですが、およそ拠点と呼べるものがなかったので、施設の改装プロジェクトに声をかけていただいたのは願ってもないことでした。

しかし、いよいよ指定管理者に応募することを決めて経営方針をまとめ、採用いただいたまではよかったのですが、2023年春のオープンを前にメンバーが不慮の事故で大怪我をしたり、私は私で忙しさにかまけて家族とのコミュニケーションを欠いて大喧嘩したり、次から次にトラブルが起きて、オープン直前はもうみんな、なかなかにボロボロでした。

いろんな方の手を借りてどうにかオープンしてからも、次々やってくる新たな課題に毎回くじけそうになりながら、熱意の塊のグループ代表を筆頭に、みんなで本当によくやってきたなと思います。

村のほうじ茶で米を炊き、特産品の豆のきなこと店で炊くあんこを使った新商品「長寿岩おはぎ」も開発しました。

地域の想いと若いアイデアを掛け合わせる「ヤマラボ」

2023年夏、名城大学社会連携センターと奈良県と山添村でコラボして、地域の人の想いと若いアイデアを掛け合わせようという企画「ヤマラボ」で学生を受け入れる事業者としてお声かけいただいたときは、「カフェの既存メニューのアレンジとカフェでのアルバイト体験をやってもらったら十分だろう」と気楽に考えていました。

しかし実際に学生さんたちのチームと会ってみると、私が思っていた以上に熱意をもって取り組もうとしてくれていることがわかり、「自分たちで商品を作り、販売して売り切る」というところまで、もっと主体的にやってもらった方がよいのかもしれないと考え直し、山添村商工会さん企画の新たなお祭りに「1日名城大カフェ」として出店してもらうことになりました。

夏休みには、学生さん自ら車を運転して、山添村の生産者さんたちに会いに来てくれました。特産品「まめくら大豆」の農家さん、「新瀬醤油醸造場」さん、無農薬栽培を行う蓮農家さんを訪ね、それぞれの生産者さんの熱い想いを伺い、案内した私たちにとっても、改めて村の先輩方の積み重ねに触れる貴重な機会になりました。

学生さんたちは「1日名城大カフェ」のために、訪ねた生産者さんの産品を全て使ったメニューを考えてくれて、お祭りに合わせた大量の製造も、なんとか日程を確保してやり切ってくれました。また、学生だけで何度も夜中までミーティングをしたり、同じメニューを自宅で5回も試作したりと、本当に真剣に取り組んでくれていました。

今振り返れば、コミュニケーション上の反省はいくつもあって、学生さんたちを苦しめてしまったことも多々ありました。私がもっとうまくやれていたら、私たちも無理なく、学生さんももっと自由に楽しくやってもらえたかも……と苦々しく思ったりもするのですが、それは次に活かすことを約束して、とにかく全員が事故なく、当日までやり切れたことを喜んでいます。

祭りはひとまず終わりましたが、ヤマラボとの関係はこれで終わりではなく、学生さんたちの考えてくれた商品やアイデアは、今後もカフェやその他、機会あるごとに活用させていただく予定です。

学びは必ず味方になってくれる

仲間と新しい仕事に取り組み、また数ヶ月間、学生さんと一緒に活動してみて改めて感じているのが、「どんなに親しい関係でも、お互いを知る努力は永遠に必要」ということ、そして「学びは必ず味方になってくれる」ということです。

実をいえば、ヤマラボに取り組むなかで、Sun-tenのメンバー間でも気持ちのすれ違いが重なって、チーム崩壊の危機に陥ったりもしていました。最終的に泣きながら本音をぶつけ合い、改めて一緒にやっていこうと確認できたのですが、まさに「奥大和コミュニティマネージャー育成プログラム」で学んだ“チームビルディングで必ず起きること”だったので、事前に学べていたことに感謝する出来事にもなりました。

本音で話すことの必要性を痛感し、ヤマラボでもあえて少し踏み込んだ言葉を使って、学生さんたちを不安にさせてしまったりもしたのですが、誰ひとり逃げ出さず、きちんと向き合ってくれた姿勢を尊敬しています。

祭りが終わって別れるとき、学生さんたちに「将来、たとえばみんなに子どもができて、夜泣きがつらいとき、夜中の2時でも電話してきていいと思うくらい、みんなのことを大事に思っています」と伝えました。暑苦しいかもしれないのですが、本心からそう思っています。

何かに真剣になって課題にぶつかったとき、一番身近にいる人には、身近だからこそ弱音を吐けなかったりします。そんなときにただ話を聞いてくれる人が、彼らのこれからの人生で幾人も見つかればいいなと思います。そしてその中に、私たちSun-tenの顔があれば、とてもうれしいなと思っています。

ヤマラボに参加してくれた皆さん、支えてくださった皆さん、改めてありがとうございました。

最後に、ヤマラボへの参加を考える頃からぼんやりと輪郭を持ち始め、活動の中で強く思い描くようになった今の私の将来の夢を、ここであえて言葉にしたいと思います。

それは「紙芝居もやってくれる駄菓子屋のおばちゃん」です。

「長寿岩おはぎ」のプレゼンのために描いた紙芝居より

子どもたちをはじめとする地域の人たちにとっては、気軽に集まれる居場所として。村を訪れる方々にとっては、気さくに出迎えてくれる村の玄関口として。これからもいろいろな人との出会いを楽しみに、「交流施設Soyel」という拠点を育てながら、この夢も育てていきたいと思っています。

Writer|執筆者

井久保 詩子Ikubo Utako

滋賀県大津市育ち。2児の母。夫のUターンに伴い、2016年より山添村民になる。「KOEYA-こえや-」の屋号で、フリーペーパー「やまぞえ便利帳」を制作・配布するなど、人々のつなぎ役となるべく活動中。

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